デュアルタスク(二重課題)トレーニングとは、「しりとりをしながら足踏みをする」のように、頭を使う課題と身体を動かす課題を同時に行うトレーニングです。介護予防教室やデイサービス、ご家庭でも、特別な道具なしで始められます。
この記事では、まずすぐに試せる具体例を10個紹介し、そのあとで安全な進め方、難易度の調整方法、なぜ「同時に行う」ことに意味があるのかを解説します。
デュアルタスクトレーニングの具体例10選
座ったままできるものから順に並べています。最初は「少し考えないとできない」くらいのものを選ぶのが目安です。
| 具体例 | 身体の課題 | 頭の課題 | 姿勢 |
|---|---|---|---|
| 1. 足踏みしりとり | 足踏み | しりとりを続ける | 座位・立位 |
| 2. 足踏み計算 | 足踏み | 100から3ずつ引く | 座位・立位 |
| 3. 3の倍数で拍手 | 足踏みと拍手 | 数を数え、3の倍数を見つける | 座位・立位 |
| 4. グーパー体操 | 左右の手で別の動き | 合図で左右を入れ替える | 座位 |
| 5. 後出しじゃんけん | 手を出す | 「勝つ手」「負ける手」を選ぶ | 座位 |
| 6. ボール回し+お題 | ボールを隣へ渡す | 野菜や動物の名前を挙げる | 座位(集団) |
| 7. 色コールステップ | 一歩踏み出す | 言われた色で左右を決める | 立位 |
| 8. 歩きながら言葉集め | 歩く | 「あ」で始まる言葉を挙げる | 歩行 |
| 9. 光ったらタッチ | 手を伸ばす | 光に気づいて反応する | 座位(器具) |
| 10. 色・順番つきタッチ | 手を伸ばす・移動する | 色の条件や順番を覚えて反応する | 座位〜移動(器具) |
座ったままできる例(1〜6)
椅子に座って足踏みをしながら、しりとりや引き算を声に出します。「3の倍数で拍手」は、足踏みに合わせて1から数え、3・6・9のときだけ手をたたきます。グーパー体操は、右手をグーにして前へ出し、左手をパーにして胸に当て、合図で左右を入れ替えます。後出しじゃんけんは、進行役が出した手を見てから「勝つ手」を出し、慣れたら「負ける手」に変えます。集団では、ボールを隣へ回しながらお題の言葉を一つずつ挙げていくと、レクリエーションとしても楽しめます。
立って・歩きながら行う例(7・8)
色コールステップは、「赤」と言われたら右へ、「青」と言われたら左へ一歩踏み出します。歩きながらの言葉集めは、歩く速さを保ったまま言葉を挙げていきます。どちらも、つかまれる場所の近くで、見守りのもとで行ってください。
器具を使う例(9・10)
光るデバイスを使うと、「光ったら触る」という説明の要らない課題から始められ、「赤だけ触る」「光った順番を覚えて触る」と判断や記憶の要素を足していけます。反応時間と正答・誤答が記録されるため、変化を数字で確かめられるのが特徴です(詳しくは後半の「REAXIONでのデュアルタスク」で紹介します)。
安全に行うための進め方
- 身体の課題だけを行う:まず足踏みやステップだけを、無理なくできるか確かめます
- 頭の課題だけを行う:しりとりや計算だけを、座ったまま試します
- 2つを同時に行う:30秒〜1分ほどの短い時間から組み合わせます
- 難易度を一つだけ上げる:できるようになったら、身体か頭のどちらか一方を少し難しくします
- 立位や歩行で行うときは、椅子や手すりなどつかまれるものの近くで、見守りのもとで行います
- ふらつきがある方、立位に不安がある方は、座ったままの課題から始めます
- 痛みや体調不良があるときは中止し、持病のある方は主治医や担当の専門職に相談してください
間違えたり、動きが止まったりしても問題ありません。「少し間違えるくらい」が、課題の難しさとしてはちょうどよい目安です。
難易度の3段階
| 段階 | 運動課題 | 認知課題 | 例 |
|---|---|---|---|
| 初級 | 座位での動作 | 単純な反応 | 座ったまま、光ったデバイスに手を伸ばす |
| 中級 | 立位・その場の動作 | 条件つきの判断 | 足踏みしながら、赤い光だけに反応する |
| 上級 | 移動を伴う動作 | 記憶・複数条件 | 光った順番を覚えて、離れた場所へ移動して同じ順に触る |
ポイントは、運動と認知のどちらか一方だけを難しくしないことです。運動が難しすぎると認知課題に注意が回らず、認知課題が難しすぎると動きが止まります。「少し考えないとできない」程度が適切です。
なぜ「同時に」行うことに意味があるのか
日常生活は、実はデュアルタスクの連続です。会話しながら歩く、信号を確認しながら横断歩道を渡る、買い物の品物を思い出しながら店内を移動する。認知と運動を切り分けて行う場面のほうが、むしろ少ないのです。そして、日常で困るのも「同時に使う」場面です。
- 話しかけられると足が止まる、ふらつく
- 考えごとをしていて段差に気づかない
- 急に呼ばれて振り向いたときにバランスを崩す
こうした場面では、注意を2つの課題に配分する力が問われます。デュアルタスク・トレーニングは、この「注意の配分」と「判断しながら動く」力に直接働きかけます。
研究面では、健康な高齢者6,000名以上を含むメタ解析で、認知課題と身体運動を同時に行うトレーニングによって実行機能・処理速度・全般的な認知機能・身体機能の改善が報告されています。また軽度認知障害(MCI)や認知症のある高齢者を対象としたメタ解析でも、デュアルタスク・トレーニングによる認知機能や歩行機能の改善が報告されています(出典はエビデンスページをご参照ください)。
REAXIONでのデュアルタスク
REAXIONは光る機器への反応を課題にするため、デュアルタスクを自然に構成できます。
- 単純反応課題:光ったらできるだけ早く反応する
- 選択反応課題:色やパターンの条件に合う光だけに反応する(判断を伴う)
- 記憶課題:提示された順序を記憶し、同じ順に反応する
- 空間移動課題:離れた位置へ移動して反応する
いずれも反応時間と正答・誤答が記録されるため、「速いが間違いが多い」「正確だが時間がかかる」といった傾向が見えます。同年代の分布と照らし合わせることで、測定値の位置づけを整理できます(テクノロジー)。座位・立位のどちらでも実施でき、施設での活用の流れはREAXION CARE(高齢者福祉)にまとめています。
続けるコツ
- 短時間で終える:1回5〜10分。長くやるより、週に複数回続けるほうが定着します
- 数字を残す:「前回より速かった」が次の参加につながります。導入施設からは「前回より速くなったと分かると、次回も参加したいと言っていただける」という声があります
- 集団で行う:順番に取り組む形式にすると、待っている間も他の人の様子を見て笑いが生まれ、レクリエーションとして成立します
- できたことに目を向ける:転倒予防や認知症予防を強調しすぎると気が重くなります。「今日は何秒だった」を楽しめる雰囲気づくりが大切です
よくある質問
座ったままでもデュアルタスクになりますか
なります。座位でも、足踏みや手を伸ばす動きと頭の課題を組み合わせれば「考えながら動く」課題になります。立ち上がりが難しい方も参加できるため、まず座位から始め、慣れてきたら見守りのもとで立位へ進めます。
どのくらいの頻度で行えばよいですか
1回5〜10分を目安に、週に複数回続ける形が取り入れやすいです。体操やレクリエーションの時間の一部に組み込むと、無理なく続けられます。
うまくできないのは良くないことですか
いいえ。すべて正しくできる課題は、簡単すぎる可能性があります。少し迷ったり間違えたりするくらいが、頭と身体を同時に使えている目安です。間違いが多すぎて動きが止まるときは、課題を一段階やさしくします。
まとめ
デュアルタスク・トレーニングは、日常生活に近い「考えながら動く」場面を意図的につくる方法です。足踏みしりとりのように特別な道具がなくても始められ、座位から立位・歩行へ、身体と頭の課題を少しずつ難しくしていきます。反応時間や正答が記録できると、変化が見え、続ける動機になります。
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※ REAXIONは医学的な診断・治療を目的とした製品ではありません。認知症をはじめとする疾患の診断を行うものではなく、特定の疾患の予防・改善を保証するものでもありません。本記事の運動は、体調や身体の状態に合わせて無理のない範囲で行ってください。
