ヒヤリハットが起きる本当の理由|体力ではなく「注意の切り替え」に注目する

ヒヤリハット報告書の原因欄に、「不注意」「確認不足」「思い込み」と書かれることはよくあります。間違いではありませんが、この書き方では対策が「気をつける」「確認を徹底する」で止まってしまい、同じヒヤリハットがくり返されます。

この記事では、ヒヤリハットが起きる瞬間を認知運動(見る・注意する・判断する・動く)の流れで捉え直し、「不注意」の中身を分解します。

「不注意」の正体は「注意の切り替えの遅れ」

人は作業に集中しているとき、注意を作業対象に集中させています。これは効率のために必要な状態です。しかしその状態から、視界の端に入った台車、背後から近づくフォークリフト、足元の段差といった「危険」に注意を切り替えるには、わずかですが時間がかかります。

ヒヤリハットの多くは、この切り替えにかかる時間が、危険が到達するまでの時間より長かったときに起きます。つまり「注意していなかった」のではなく「注意を切り替えるのに時間がかかった」のです。

ヒヤリハットを4段階で分解する

段階 何が起きているか 遅れの例
1. 察知する 変化や異常が視界に入る 視野の端の動きに気づかない
2. 注意を向ける 作業から危険へ注意を切り替える 手元に集中していて切り替えが遅れる
3. 判断する 止まる・避ける・声を出すを選ぶ 迷って一瞬止まる、逆に急いで誤った動きをする
4. 回避する 選んだ動作を実行する 身体が思ったより動かない

報告書に「不注意」と書く前に、どの段階で時間がかかったのかを本人と一緒に振り返ると、対策が変わります。1で遅れたなら「視界を遮る物の配置」、2なら「合図・警告音の設計」、3なら「判断ルールの単純化」、4なら「通路幅や足場の確保」といった、環境側の対策につながります。

切り替えの速さは、日によって変わる

注意の切り替えにかかる時間は固定ではありません。次の要因で変動します。

  • 疲労・睡眠不足:残業後や夜勤明けは切り替えが遅くなりやすい
  • 慣れ:作業が自動化するほど、いつもと違う変化に気づきにくくなる
  • 年齢:加齢とともに、複数の情報に注意を配る処理は緩やかに時間がかかる傾向がある
  • 心理的な焦り:納期・遅れを取り戻そうとする場面では、判断を省略しやすい

「気をつけましょう」だけでは変わらないのは、本人が自分の切り替えの速さを知る手段がないからです。

「体験」が対策を自分ごとにする

REAXIONでは、光るデバイスを使い、「光ったら触る」「赤だけ触る」「緑には触らない」といった課題で、注意の切り替えと判断の速さ・正確さを数分で測定します。

たとえば選択反応課題では、反応は速いが誤反応が多い人と、正確だが時間がかかる人がはっきり分かれます。前者は「急ぐ場面での確認を一拍置く」、後者は「早めの声かけ・合図を受ける側に回る」といった、本人の傾向に合った対策を組み立てられます。

導入した製造業の現場では、測定結果が出たことで「注意喚起が具体的な話になった」と安全衛生担当者が話しています。個人にはSafeScore個人レポートとして傾向と安全行動のアドバイスが届き、管理者には部署別の分布やフォロー優先者がまとめられます。

現場でできる対策の例

  1. 報告書の原因欄を4段階で書く:「不注意」ではなく「2. 手元作業からの切り替えが遅れた」と書く運用にする
  2. 切り替えの合図を設計する:警告音・回転灯・声かけなど、注意を「引き戻す」仕組みを増やす
  3. 疲労の影響を可視化する:同じ課題を作業前後で測り、数値が落ちる時間帯を把握する
  4. 定期的に体験する機会をつくる:安全大会や研修で全員が自分の反応を体験する

まとめ

ヒヤリハットは「注意していなかった」のではなく「注意の切り替え・判断・回避のどこかに時間がかかった」ことで起きます。どの段階かが分かれば、対策は「気をつける」から「環境と手順を変える」へ進みます。

関連記事:反応時間はなぜ労災予防の指標になるのか/KYTを体験型にする方法。企業向けの活用方法はREAXION SAFETYをご覧ください。

※ REAXIONは医学的な診断・治療を目的とした製品ではありません。測定結果は事故の発生を予測・保証するものではなく、安全管理の判断材料のひとつとしてご活用ください。

Cognitive Motorを、あなたの現場へ。

REAXIONの測定・トレーニングを実際に体験してみませんか。